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慢性腎臓病とは?

慢性腎臓病は、腎臓機能(GFR)が健康な人の60%未満に低下する(GFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が3か月以上続く病気です。
腎臓は毎日200ℓの血液をろ過し、老廃物を尿として排出する以外にも、体液量や血圧の調節、体内のアルカリ性・酸性バランスの維持、赤血球産生を促すホルモンの分泌などを担っています。腎臓機能の低下によって、不可逆的に全身状態を保つ機能が損なわれ、高血圧症、尿毒症、骨粗鬆症、腎性貧血などの合併症を引き起こします。
さらに悪化すると、腎臓自身で尿を作ることや、老廃物の排出ができなくなるため、血液透析、腹膜透析、腎移植などの検討が必要です。しかし初期には自覚症状が乏しく、症状が現れた時にはすでに病状が悪化している可能性があります。そのため、早期発見・早期治療が重要です。
慢性腎臓病の症状
- 尿が泡立つ(タンパク尿)
- 夜間に何度も排尿したくなる
- 足のむくみ
- 高血圧
- 全身のだるさ
- 食欲不振
- 手足のしびれ など
さらに悪化すると、肺や血管に過剰な体液と老廃物が溜まり、赤血球産生を促すホルモン分泌が減少することで、息苦しさ、めまい、頭痛、意識障害などの症状が見受けられます。
慢性腎臓病の原因と種類
慢性腎臓病の原因
慢性腎臓病の原因として、以下のようなものが挙げられます。
- 加齢に伴う腎臓機能の著しい低下
- 生活習慣病(糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなど)
- 自己免疫疾患(膠原病、全身性エリテマトーデスなど)
- 腎臓に悪影響を及ぼす可能性がある薬剤の使用(解熱鎮痛薬、漢方、抗がん剤など) など
慢性腎臓病の種類
慢性腎臓病には、慢性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症、多発性嚢胞腎などがあり、多くは腎不全へと悪化してしまいます。
慢性糸球体腎炎
腎臓の濾過装置である糸球体に慢性的な炎症が起こる病気です。初期は自覚症状に乏しく、健康診断で発見されることが多くあります。
糖尿病性腎症
長期間の高血糖により腎臓の血管が傷つき、腎機能が低下していく病気です。糖尿病の三大合併症の1つで、適切な血糖値コントロールが重要です。
腎硬化症
高血圧により腎臓の血管が徐々に硬化し、腎機能が低下していく病気です。血圧管理が重要な予防方法となります。
多発性嚢胞腎
遺伝的な要因により、腎臓に多数の嚢胞(水が溜まった袋)ができる病気です。嚢胞の増大により腎機能が低下していきます。
慢性腎臓病の診断基準
慢性腎臓病は、尿検査、血液検査、超音波検査などの検査結果をもとに、下記のいずれか、または両方が3か月以上続いている場合に診断されます。
- タンパク尿(微量アルプミン尿を含む)などの尿異常、画像診断や血液検査、病理所見で腎障害が明らかである
- 血清クレアチニン値をもとに推算した糸球体濾過量(eGFR)が60ml/分/1.73㎡未満の状態
特殊な腎臓の病気が疑われる際は、腎臓の一部組織を採取して顕微鏡で調べる腎生検が必要なこともありますが、入院が必須ですので対応可能な医療機関へご紹介いたします。
慢性腎臓病の治療
慢性腎臓病と診断されたら、以下の治療を開始し、合併症や末期腎不全に至らないように防ぐ必要があります。
生活習慣の改善
腎臓機能を守るために、以下のような生活習慣の改善を心がけましょう。
- 禁煙
- 減塩
- 飲酒を控える
- 運動習慣を作る
- 適正体重を維持する など
食事療法
腎臓にとって負担になり得るのが、高タンパク食、過剰な塩分・カリウム・リンの摂取です。こうした食事や成分を摂り続けると、機能が低下し始めている腎臓に追い打ちをかけてしまいかねません。そのため、以下のような食事の工夫を心がけましょう。
- 低タンパク食:1食、体重1kg当たり0.8g以下に制限
- 摂取カロリー:1食、体重1kg当たり25~35kcal
- 塩分摂取量:1日6gへ制限
- 調味料の工夫:酸味、香辛料、薬味、減塩製品などを使用する
- リン・カリウム制限:果物類、いも類、緑黄色野菜類、コーヒー、豆類の摂取を控える
- 調理方法の工夫:カリウムやリンは水溶性のため、水にさらす、茹でこぼし、ゆで汁を使用しない など
薬物療法
慢性腎臓病の原因疾患への治療や、対症療法として薬物療法を行います。
- 降圧薬
- インスリン投与、血糖降下薬
- ESA製剤
- 経口陽イオン交換樹脂剤
- 尿毒症毒素吸着剤 など
各薬剤による副作用が生じていないかを定期的に評価しながら、内服量を調節していきます。